夫と朝食をとっていたときのこと。
夫が食卓の椅子に座ろうとして、腰に手を当てて顔をしかめている。
「どうしたの?腰痛いの?」
「うん、なんか昨日から急に。」
「昨日なんかしたの?」
「思い当たることもないんだけど…。」
いつも腰痛がある人じゃないので、疲労かな、ぎっくり腰かな、もしかして内臓かな、と不安になる。
体の中のことってよくわからないから不安だ。痛みがあっても目には見えないからどこが痛いのかはっきりとはわからない。病院に行ったとしても、わからないからうまく言葉にできず、伝わらない。
それでも上手にくみ取ってくれるお医者さんに診てもらえたり、レントゲンをとったりして、病名が付くと安心する。
病気だとわかって安心するというのも変だけど、自分の痛みや気持ち悪さが、ちゃんとした病気で、名前もついているとわかると安心できる。
病気なら治療できるかもしれないし、治療できなくても痛みをわかってもらえる。
自分にしかわからないというのはとてつもなく不安だ。
新しいことを始める時とちょっと似ている。初めてのことってわからなさすぎて、どこがわからないかを言葉にすることもできない。だから聞くこともできない。
例えば初めて彼氏とデートした時。
年下でお金がなかった彼が、その日は奮発してお寿司屋さんに連れて行ってくれた。座ったのはカウンター席。私も若かったので緊張していた。
そんな初々しいカップルに店の大将は色々話しかけて盛り上げてくれた。気遣ってくれたんだと思う。でもどんどん機嫌が悪くなる彼。
何かがまずかったんだと思う。でもわからない。何が悪かったんだろう?彼に聞いても「怒ってないよ」と言う。怒った顔で。
経験を重ねた今なら、なけなしのお金をはたいてくれた彼とじゃなく、大将と盛り上がるなんて、絶対アウトだったとわかる。
あの時、そういうのに嫉妬っていう名前があることを知ってたら、ちゃんと対処できたのに。
今だってわからないことだらけだ。
ブログを始めたのはいいけど、教科書通りにやったら苦しくてたまらない。
世の中には教科書通りにやって上手くできる人が多いようだ。ブログアフィリエイト初めて一か月で月収50万円!とか、○○PV達成!とか。みんなすごいな。苦しくないのかな。
最近、この苦しみには「興味ないことをやっている」って名前がついていることを知った。ああだからこんなに苦しかったんだ。やっぱり名前がつくとすごく安心する。それだけで苦しさが消える。
「興味あること」に方向かえてみたけどやっぱりわかんないことばかり。こんなことばかりして何になるんだろう?と毎日が不安だ。でも苦しくない。生きてる感じがする。
空き地で、草や拾ってきた段ボールで秘密基地を作ってた子供時代に戻ったみたいな気がする。方向合ってるんじゃない?
きっと明日もわからないことで頭がぐちゃぐちゃになる。でもきっとそのうち名前が付くから大丈夫、だと思う。